どちらにもある
随分と涼しくなってきました。夜中にふと寒ささえ感じる日もあります。 先日も悪い癖で、遅い食事をとったまま、ついついウトウトとしてしまい、気が付くともう朝。タンクトップで横になっていた私の肩は冷たくなっていました。 寝ぼけながら両手で反対側の両肩を触ると、じんわり冷たいコンクリートのような感触。手のひら全体が冷たさを捉えて「風邪ひいてしまうよ」というネガティブなイメージが頭に広がりました。 その時です。頭の意識が手から肩に移ったのです。肩で手のひらを感じてみました。 すると、今度は温かいのです。凄く温かい!
同じ体、同じ頭で真逆の現象が起こっていることに理科の実験でも終えた満足感を得ながら寝室にいって再び眠りました。
とあるSLのドキュメンタリーを見ました。もう随分年を重ねたそのSLは今でもしっかりと走り続けているのですが、とにかく手がかかります。 暖気も出発の数時間前から。石炭の質によっては走らなくなり、止まって掃除して、石炭の総入れ替え。今のコンピュータ制御された電車とは似て非なるもの。 運転士、機関士は常に音、蒸気、臭いを気にして旅路を運行していきます。 運転士とその機関士は言いました。「彼(SL)を機械だと思うと、その価値は鉄の塊にしかならない」と。そのSLは生き物であり、彼ら(運転士と機関士)の人生すら運んでくれているもの。 手のひらと肩のことを思い出します。現象は1つなのに、感じる方向によって目の前で起きていることの意味が180度も変わってくる。成功とか幸せ(あるいは失敗や不幸)もこの程度の話なんだろうと思いながら、カッコよくサルデーニャを駆け抜けるSLに見とれてしまいました。 いつも目の前にあるもの、とりわけ私にとって大切なものについて、今一度感じ方を見つめ返そうと思いました。 ワインとは。 仕事とは。 ・・・。 そして、あのSLと運転士、機関士の関係のようになり、自分の旅路をしっかり快走していきたいものです。 秋は何をするにもいい季節です。 価値はどちらにもある。